2013年に公開の映画『そして父になる』の伏線と疑問点について解説します。
第66回カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞
今回紹介するのは下記の「4つ」
- 面接シーンで匂わせ? 優秀な自分に似ていない息子
- 大事なのは息子を愛した時間か血縁か
- 不幸な“事故”の再発ではない? 取り違えは起こるべくして起こっていた
- “そして”父になるタイトルの意味とは?
①:面接シーンで匂わせ?優秀な自分に似ていない息子
私立の小学校受験の面接の際、野々宮良多(福山雅治)は息子は父母どちらに似ているのかと問われると「穏やかで他人に対して優しいところは妻に似ている」と答えました。
同時に短所は「同じようなことになってしまいますが、おっとりしていて負けてもあまり悔しがらないところ」だと答えています。
自分のように優秀でない、そして負けん気もない慶多へ対しどこかもどかしそうな良多。
そして取り違えが発覚するのですが、慶多の本当の父親は同じく気が小さく優しい性格。
そして自分の本当の子は勝ち気で強気でした。
物語冒頭、いきなり始まるこの面接シーンが取り違え、本当の子ではないということの匂わせでした。
②:大事なのは息子を愛した時間か血縁か
病院から取り違えの事実が伝えられた際、良多は帰りの車で
「やっぱりそう言うことか…」
と呟きます。
それを妻のみどり(尾野真知子)は不満げな顔で見つめていました。
このシーンが大切な伏線でした。
病院から子供達の将来のためにも、早めに子供を取り替えた方がいいと助言される野々宮家と斉木家。
愛した時間か血縁かどちらを取るのか選択を迫られます。
互いの家が交流していくうちに、両者の決定的な違いが浮き彫りとなってゆきます。
裕福で生活にゆとりはあるものの仕事一筋の良多。
経済的に多少の不安があるものの常に子供と全力で接する斎木家の父親・雄大(リリーフランキー)
しかし良多も決して子供のことを放ったらかしにしているわけではなく、ゲームをしたりピアノの発表会に行ったりと、自分なりに向き合っています。
物語に登場する人物の多くは“時間”が大事だと考えていますが良多はどうでしょうか?
自分では家族との時間も大切にするできる父親だと思っていました。
しかし本心は先にあげた「やっぱりそう言うことか」という良多の言葉。
自分のように優秀ではない慶多へ対してどこか不満があったのです。
良多は血縁を優先する考えなことに気づきます。
そしてこのことを妻・みどりからは責め立てられるのです。
③:不幸な“事故”の再発ではない?取り違えは起こるべくして起こっていた
6年育てた息子・慶多が出産時に取り違えたかも知れないとの連絡が突如、野々宮家に入ります。
「そんなの僕らが産まれた頃の話でしょ」
と問う良多(福山雅治)でしたがDNA鑑定の結果、慶多は自分の子ではないと言うことが結論づけられました。
初めは不幸な“事故”が、また起こってしまった。
そう思って物語を見ているわけです。
しかしこの言葉が伏線となっていました。
この取り違えは“事故”ではなかった。
誰かが“故意”に行ったことだったのです。
幸せな家族を陥れたのは誰なのか?
そして犯行の理由とは…。
④:そして”父になるタイトルの意味とは?
映画のタイトルに“そして”という言葉が使われています。
これに関して是枝監督は「母親の場合は“そして”はいらない」と語っています。
物語の前半、父親としてどこか形式的で1つの役割のようにこなしてきた良多。
母親のそれとは違う、あくまで礼儀や作法を教えるためのどこか他人事のような感じもする関わり方でした。
「子供は時間だ」と雄大に指摘され、戸惑うも徐々に琉晴(実子)との関わり方を変えようとする姿が見られ始めます。
そしてクライマックス。
ある事をきっかけに別れた慶多へ再び会いに行った良多。
血縁よりも時間へ価値観がシフトした良多。
その結果タイトル通り“そして”父になったのです。
以上が映画『そして父になる』の伏線と疑問点でした。
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総合評価&あらすじ
映画『そして父になる』のあらすじ
”赤ちゃん取り違え事件”を扱った今作。
2013年に公開され、第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した作品。
順風満帆な人生を送るエリート会社員の男・良多。
しかしある日6年間育ててきた息子が出産時に取り違えられていたことが発覚する。
大事なのは愛した時間か血縁か。
2つの家族の葛藤と本当の愛、そして親とは何なのかを掘り下げるヒューマンドラマ。
印象に残ったセリフ・シーン
①:「もうミッションなんか終わりだ!」
斎木家でくらし、向こうの両親をパパママと呼ぶことを慶多に課した良多。
「これは大人になるためのミッションだ」と伝えていました。
慶多へ対して「もう会わない」と言っていた良多でしたが、ふとしたことがきっかけで慶多の自分へ対する思いに気づき、自ら会いに行ってしまいます。
慶多はその場から逃げ出し「パパなんかパパじゃない」と言いますが、そこで良多は
「そうだよな。でもな、6年間はパパだったんだよ。出来損ないだけど。もうね、もうミッションなんか終わりだ!」
と伝えました。
涙腺が崩壊、滝のように涙の溢れるシーンです。
②:「どう見ても“慶多”って顔だもんな」
子供達が遊んでいる姿を遠くから見守る良多達。
ふと雄大が
「不思議なもんだな。俺は慶多の顔見て“琉晴”って名前つけたわけだろ。どう見ても“慶多”って顔だもんな、もう」
と言いました。
名前って不思議ですよね。
始めは何もなかったその子のために一生懸命考えたものが、いつのまにかその子の一部となっていく。
名前に限らずですが、親ってそう言うふうに一つ一つ大事に子供に何かを与えていて、そしてそれが子供作っているんだなぁっとこのセリフを聞いて思いました。
③:「あの子を裏切ってるみたいで」
琉晴との関わり方を改め、お家でキャンプごっこをすることにした良多。
とても楽しい時間を過ごし、リビングのテントで琉晴が寝るとみどりはベランダで泣きはじめました。
慶多をとても大事に思っており、今回の取り替えについて納得できていなかったみどりですが、琉晴と時間を過ごすうちに「可愛くなってきた」と泣き出すのです。
「慶多に申し訳なくて。あの子を裏切ってるみたいで。慶多も今頃・・・」
自分が大切に思ってる子供はたった1人慶多だけなのだと。
そう信じていたみどりは、琉晴を可愛く思ってしまった自分にショックを受け、同時に慶多も今頃、斎木家の夫婦に懐いているのかと思うと苦しかったのですね。
物語は良多を中心に進んでいきますが、母親の目線が入ってきてとても印象的なシーンでした。
みんなの評価は?
まとめ
映画『そして父になる』の伏線と疑問点について解説しました。
- 面接シーンで匂わせ? 優秀な自分に似ていない息子
- 大事なのは息子を愛した時間か血縁か
- 不幸な“事故”の再発ではない? 取り違えは起こるべくして起こっていた
- “そして”父になるタイトルの意味とは?
あれっ…?そんな伏線あったかしら?
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